2026/03/25
以前にも取り上げたテーマであるが、自分の中でさらに煮詰まったので、再度このテーマを取り上げようと思う。
「シュレーディンガーの猫」について論じる前に、電子の二重スリット実験について簡単に説明しておく。

電子銃から電子を1発だけ発射する。
発射された電子は、2つのスリットが設けられた壁に達する。
壁に跳ね返されずに運よくスリットを通過した電子は、後方にあるスクリーンに着弾し痕跡を残す。
この作業を何千回、何万回も繰り返すと、やがてスクリーンには着弾痕跡の干渉縞が現れる。
これが有名な二重スリット実験である。
干渉縞が現れるということは、電子は2つのスリットを同時に通過してお互いに干渉したとしか考えられない。
しかし、電子は量子であり、2つに分割出来ないのである。
そこで、検出器を設置して、どちらのスリットを通過したのかを検出しようとしたところ、干渉縞は現れずに2本の線になってしまった。
この現象を説明する代表的な解釈の1つにコペンハーゲン解釈がある。
コペンハーゲン解釈によると、電子は右のスリットを通過する状態と左のスリットを通過する2つの状態の重ね合わせ状態にあるが、観測した瞬間に1つの状態に確定する。
つまり、観測するまでは状態は決まっておらず、観測という行為によって状態が決定するのだ。
しかし、これはミクロの粒子の話であって、マクロの物質には当てはまらないのではないか? という疑問が残る。
そこで、シュレーディンガーさんは、「シュレーディンガーの猫」という思考実験を提案した。

箱の中に放射性物質、ガイガーカウンター、ハンマー駆動装置、毒ガス入りの瓶、猫を入れておく。
放射性物質は、1時間に50%の確率で崩壊し放射線を出すものとする。
ガイガーカウンターは、ハンマー駆動装置と連動しており、放射線を検出すると、ハンマーを駆動する。
ハンマーを駆動すると、毒ガス入りの瓶が割れる。
毒ガス入りの瓶が割れると箱の中の猫は死ぬ。
実験開始から1時間後に箱の中の猫の生死を観測する。
つまり、放射性物質が崩壊すれば、猫は死に、崩壊しなければ猫は生きている、その確率はどちらも50%となる。
この思考実験の肝は、ミクロの粒子の振る舞いが猫というマクロな物体に連動して起こるところにある。
コペンハーゲン解釈によれば、観測するまでは、可能性のある2つの状態(ここでは、生きた猫と死んだ猫)が重ね合わせの状態にあり、箱を開けて中を観測した瞬間に猫の生死が確定することになる。
箱の蓋を開ける直前は観測前だから、状態は確定しておらず、箱の中には生きた猫と死んだ猫が重ね合わせ状態になっている。(半死半生の猫)
(シュレディンガー自身は、半死半生の猫なんているわけないから、コペンハーゲン解釈はどこかに問題があると思っていたようだ。)
「シュレーディンガーの猫」の話を聞いたことがある人の中には、箱の蓋を開ける直前には、本当に半死半生の猫がいると思っている人もいるかも知れないが、
おそらく、それはないだろう。
まあ、確かめようのないことなので、解釈と言われているのだが・ ・ ・。
さて、ここからが本題である。
「シュレーディンガーの猫」における観測問題では、「観測」という言葉が独り歩きして「人間が観測」と勝手に置き換えているような気がしてならない。
二重スリット実験に端を発した観測問題であるが、二重スリット実験で電子を観測したのは、人間ではなく、検出器なのだ。
特に人間が観測する必要はないのである。
「シュレーディンガーの猫」の思考実験では、人間が観測する前に、検出器が先に観測しているのである。
そのように考えると、人間が蓋を開ける直前には既に猫の生死は決定していたことになる。
それなら、原子の崩壊を検出する直前には半死半生の猫がいたのでは? と思う人がいるかも知れない。
しかし、原子の崩壊前は、「シュレーディンガーの猫」のからくり装置はまだ起動しておらず、猫は生きているのである。
何故、観測(検出)という行為が電子などの量子に影響を与えるのであろうか?
検出について深堀りしてみることにする。
検出器は、センサと言った方が馴染みがあるかも知れない。
センサは大きく分けて2種類ある。
アクティブ型とパッシブ型である。
アクティブ型とは、被測定物に電磁波や音波などを照射して、そこから反射してくる電磁波や音波を検出するものである。
代表的なものにレーダーや魚群探知機(ソナー)などがある。
パッシブ型センサは、被測定物が発する光(電磁波)や音などを検出するものである。
代表的なものとしては、サーモグラフィなどがある。
ここて注目してほしいのは、パッシブ型センサの場合、被測定物に全く影響を与えない点である。
あなたの背後から、サーモグラフィであなたの体温を測定されても、振り返ってあなた自身の目で確認しない限り、あなたは測定されていることに気づかないのである。
二重スリット実験でスリットを通過した電子を検出するために使われた検出器は、電磁波を照射するアクティブ型と思われる。
物質の最小単位である電子を検出するには、原理的にパッシブ型センサでは不可能なのである。
だから、電磁波を照射して電子の存在有無を検出していたのである。
これでは、電子に影響を与えてしまったと言われてもしかたがないであろう。
ちなみに、「シュレーディンガーの猫」の実験で使われているセンサは、原子が崩壊した時に飛んでくる放射線を検出すれば良いので、このセンサはパッシブ型である。
仮にアクティブ型センサが使われたとしても、「蓋を開ける直前には猫の生死は決定していた。」という結論は変わることはない。
